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新井紀子著「シン読解力」【愛知県日進市香久山の国語専門個別指導塾】

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現代において読解力はもっとも必要な力である

以前のブログにも書きましたが、RST(リーディングスキルテスト)というものをご存じでしょうか。

これは、「シン読解力」著者の新井紀子氏が膨大な量のデータをもとに作成した「教科書を読む力」を測るテストのことです。
本書によると、「教科書」=「知識や情報を伝達する目的で書かれた自己完結的な文書」です。これを自力で読み解く力を測るテストのことをいうそうです。
教科書は、解釈が一意に決まる文書ですから、読み解いた先にある解答は必ずひとつです。それをきちんと自力で把握できるかを調べることができるテストがRSTという訳です。

現在、活字離れと言われて久しいですが、実際は私たちが1日に読む文字数は以前に比べて明らかに増えています。SNSだけが理由でなく、仕事のやりとりが、メールや添付ファイルなどに置き代わったからでしょう。

つまり誰しもに文書を作成する力を求められる時代なのです。

高度経済成長期には、そのような能力はエリートの一部にしか求められていないスキルでした。しかし、現在はメールの普及によってほとんどの職業に求められるようになりました。大量に流れて来る説明文を正確に読みこなし、正しい返答を文書によって行う、ということが当然に期待されています。

さらには、生成AIの台頭により、話がややこしくなりつつあります。
実は、生成AIは、息をするように嘘をつきます。それは設計上避けようがないものであり、その説明は今回割愛しますが、生成AIを使って生産性を向上させようと思ったら、少なくとも生成AIが出力する文書を裏付ける資料や文章を読みこなす能力が必ず必要になります。
その文章とは、さきほどの「知識や情報を伝達する目的で書かれた自己完結的な文書」なのです。
それらを自力で読み解く力がない限り、生成AIを使うことでかえって生産性が下がる可能性があります。

そういう意味で、現代において、もっとも必要なスキルの1つが「読み解く力」つまり読解力であると言えます。

 

RST(リーディングスキルテスト)とは?

実際に行われているRSTの問題を紹介します。じっくりではなく、できるだけスピーディに解いてみてください。

Q 次の文を読みなさい。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
【文】セルロースは(   )と形が違う
①デンプン  ②アミラーゼ  ③グルコース  ④酵素
                              (新井紀子著「シン読解力」より抜粋)

化学の知識がなくとも、答えは①のデンプンだとお分かりになるでしょう。
しかし、この問題を出されてアミラーゼを答えていた生徒が多かったそうです。
お分かりでしょうか。
これはまさに教科書を読むことができない生徒が多いことの証左なのです。

 

私が国語教育を志した理由

このような現象はなぜ起こるのか、ということも検証されています。
著者は、子ども達の「学習言語能力不足」を挙げています。

現在、日常会話で使う「生活言語」と教科書で用いる「学習言語」は、構造も語彙も異なります。生活言語だけで育った子どもは、抽象的・論理的を理解できず学習が止まってしまいます。
生活言語のレベルが教科書と同等ならば問題はないのですが、ご存知SNSに出てくる文章は、誰もが好きな時に好きなだけ発信できます。当然、推敲などという面倒な作業はありません。
だから、文法的にめちゃくちゃな上、何が言いたいのかわからない文章がごまんとあります。
それを読んで手前勝手な解釈をしてコメント欄が荒れるという救いのない場面もたくさん見ます。
そんな生活言語だけで育つと、教科書を理解できないため自学が不可能となります。

そして、新井先生曰く、今の学校教育だけでは言語能力は十分に伸びず、特に15歳前後を境に成長が停滞する傾向がある傾向があるというのです。これは仮説ではなく、膨大な試験、データ、統計に基づく確かなものでした。

「シン読解力」を読んで膝を打つ、というよりむしろ背筋が冷たくなったことを覚えています。
私自身のとっていたデータから言っても、まさに中3前後で学力が停滞する子どもは、多くが模試の国語の成績が良くない、もしくは授業を理解する力が弱い言語力に不安を抱える子達だったのです。

何よりも私自身学生時代、国語が絶望的に苦手であり、まさに中3の時期に成績が頭打ちになるどころか、どんどん下がるという同じ現象を身をもって経験していたのです。
そんな子どもを増やしてはいけない、と強く思いました。

 

生活言語と学習言語は違う

ここで、少し付け足しをしておきます。
先ほど15歳前後を境に成長が停滞する、という話をしましたが、ここにある傾向があります。新井先生の話と私自身の経験がピタリとあったもう一つの例です。

それは、停滞する原因は数学や理科であることが多いことです。
これは先ほども述べたように、言語が、日常会話で使う「生活言語」と教科書で用いる「学習言語」に分かれていることに起因します。いくら日常生活で言葉を多く使っていたとしてもそれは「生活言語」の中での話です。

「どうして?」という言葉一つをとっても、単に理由を聞いているのか、「そんなことを言わないで」という懇願だったり、「なぜ今のタイミングでそれを言うのか」といった様々な意味合いがあります。文脈や関係性によって、またその時の声質で異なるのです。だから言葉はとても豊穣かつ潤沢とも言えます。
しかし、そのような言語表現は、残念ながら「積み上げ」する性質を持ちません。
「積み上げる」性質を持つのは、学校での教育で使われている言語、つまり教科書で使われている言語である「学習言語」です。これを習得していないと、それを中心に組み立てられる科目である数学や理科(高校生であれば特に物理・化学)でついていけなくなる現象が起こってしまうということなのです。

本を読んでいても、国語の成績が良くないケースも原因はこれに当たると思います。
いくら小説で日常的な生活言語を覚えても、学習言語の習得がされていないからです。

 

対策は?

「じゃあ、どうすれば読解力がつくの?」と聞かれそうですが、残念ながら「こうすれば読解力がつく」と言う最短にして最速の方法はありません。
地道に積み上げること、じっくりと焦らず丁寧に積み上げることしかありません。

様々な道がありますが、まずは「語彙力」です。

時間がない中で覚える、となると語彙力プリントや語彙力テキストを使って機械的に覚えていくことになってしまいますが、できれば、低学年の中から先生や保護者の方が絵本の読み聞かせや童謡を歌わせるといったことで体から語彙を獲得させるのがベストです。学年が上がってくれば、その中に科学的読み物も入れて読んであげたりすると良いでしょう。
できれば、親や先生以外で、年輩の方と話す機会が多ければ多いほど言葉を覚えます。

ただし、辞書で調べるのは基本的な語彙が備わっていないと使いこなすこと自体が難しいです。
テキストで覚えるにしても、下手をするとその語彙の説明を読んでもわからない、ということもあるかもしれません。その場合は、時間はかかりますが周りの人間が例えを使って説明していくしかありません。
語彙力が少ない場合や低学年の場合は、実際のケースを見聞きしてそこから「ああ、こんな意味なんだ」と理解させる帰納法が、語彙力をつける良い方法です。
語彙力がつき、学習言語を習得すると、抽象的な説明を読んで自力で意味が理解でき、具体的な事例に落とし込めるようになります。これを演繹法と言います。

語彙力がついてくれば、実際に文章を読む上で読解に必要な力のうち何が足りていないのかの分析をし、それに対して手を当てていく必要があります。
それは、集団の授業ではできません。
だからこそ修英塾の国語指導は完全個別1対1なのです。

読解力の習得には、本人のやる気や好奇心は当然のこと、時間がかかります。
よく受験学年になって、慌てて問い合わせをしてくるご家庭が多くあります。
お子様の状況にもよりますが、ある程度の読解力をつけるのに年単位で時間がかかることも珍しくありません。
場合によっては2年や3年以上かけてじっくり読解の力伸ばしていく必要がある子どもだっているのです。
「塾に行かせて力をつける」ことも大切です。
長文の読み方、記述の答え方、設問の分析の仕方などそこでしか学べないことがたくさんあります。
しかし、実は母語の習得には、ご家庭での取り組みこそが大きく影響することがわかっています。
以前のブログでもお伝えをしているのですが、言語能力のほとんどは遺伝ではなく家庭環境に原因があることが分かっています。

育児や仕事で時間がない中、保護者は大変です。
しかし、どうかわが子に豊かな人生を歩ませるために、ご家庭での取り組みも大切にしていただきたいと思います。

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